早期発見・早期治療のために私たちができること 脳の健康、身体の健康、気になったらMRIを

気になる症状・しびれ、力が入らない

しびれ

神経内科の日常診療で、「しびれ」を訴える患者様を診察する機会は非常に多いのですが、その原因は極めて多岐に渡っています。「しびれ」を診察の際に最も重要なのは、「しびれ」の部位をよく診察することです。

例えば、「しびれの部位」が片側一方に偏っている場合には、対側のラクナ梗塞などの脳血管障害を疑い、頭部MRI検査を施行します。あるいは、「両手のしびれ」を訴えている場合には頸椎の椎間板ヘルニアによる頸椎症性脊髄症を疑い、頸椎MRI検査を施行します。さらに、「両足のしびれ」がある場合には腰椎の椎間板ヘルニアによる腰部脊柱管狭窄症を疑い、腰椎MRI検査を施行します。

その他、末梢神経障害によるしびれも考えられます。その場合、末梢神経障害の原因として、糖尿病や膠原病、甲状腺疾患などが挙げられ、血液検査による多角的な診断が求められます。近年、末梢神経障害性疼痛に対する新しい薬が認可されましたが、この様な新薬を用いるのに加えて、理学療法を併用する事で、「しびれ」の緩和を図っていくのが宜しいでしょう。

しびれの原因として考えられる主な疾患 脳梗塞 (ラクナ梗塞)
頸椎椎間板ヘルニア、頸椎症性脊髄症
腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症
末梢神経障害(糖尿病、膠原病、甲状腺疾患)

力が入らない

手や足に力が入らない場合、その原因として脳梗塞などの脳血管障害が考えられます。

「力が入らない」と云う症状に加えて「呂律が回らない」「言葉がうまく出ない」などの症状が加わった場合、アテローム血栓性脳梗塞を強く疑います。直ちに頭部MRI検査を施行すべきです。その際、拡散強調画像(DWI)と反転回復画像(FLAIR)を組み合わせて施行するのが宜しいでしょう。

前述の如く、拡散強調画像(DWI)は発症早期の病変のみを捉える事ができるので、急性期の脳梗塞の診断には特に威力を発揮します。脳梗塞の範囲が大きい場合には、直ちに入院可能な専門施設を御紹介し、点滴治療を開始致します。ここで注意すべきは、脳出血でも脳梗塞と同じような症状が出現する事です。脳梗塞では抗凝固療法を行う必要がありますが、脳出血では反対に止血療法を行う必要があります。ですから、必ず、MRI検査などの画像をチェックし、両者の鑑別を行ってから治療を開始する必要があります。

力が入らないことの原因として考えられる主な疾患 脳血管障害:脳梗塞 (アテローム血栓性梗塞)
      脳出血

手がふるえる

いわゆる「ふるえ」を神経内科の専門用語で「振戦」と云い、主に手指に出現します。「振戦」は自分の意思に依らず (不随意に) 律動的・規則的な動きを呈するもので、「姿勢維持振戦」と「安静時振戦」に2大別されます。


「姿勢維持振戦」は、主に動作時に生じるもので、「箸が持ちにくい」「茶碗から汁がこぼれる」等の症状となって現れます。中でも、特に字を書く際に出現するものを「書痙」と呼びます。これら症状は何れも「本態性振戦」と云う病気が原因で生じます。現在、「本態性振戦」の原因は残念ながら不明です。

しかし、抗不整脈薬の一部(β遮断薬)や抗痙攣薬、抗不安薬が有効な場合が多いので、適切な治療薬の選択により症状を緩和する事が可能です。ここで注意しなければならないのは、甲状腺機能亢進症でも本態性振戦に似た姿勢維持振戦が出現する点です。ですから、手のふるえを診察する場合には、必ず血液検査で甲状腺機能をチェックする必要があります。甲状腺機能亢進症であった場合には、上記に加えて、抗甲状腺薬を内服するのが宜しいでしょう。


一方、「安静時振戦」は、主に安静時に生じるもので、その原因として最も疑うべきはパーキンソン病です。
「安静時振戦」はパーキンソン病の発症初期の症状として重要です。また、診察に際しては、他のパーキンソン病に特徴的な運動症状を伴っているか否かを慎重に見極める必要があります。この様に単に「ふるえ」と云っても、その診断は奥が深く、治療も含めて専門的な知識と経験が必要です。「ふるえ」の症状がある場合は、ぜひ神経内科専門医の受診をお勧めいたします。

手のふるえの原因として考えられる主な疾患 本態性振戦、甲状腺機能亢進症、パーキンソン病

体を動かしづらい・歩きづらい

体を動かしづらい、歩きづらいなどの症状がある場合、パーキンソン病の疑いがあります。
パーキンソン病は運動症状を主体とする神経疾患の代表で、加齢と深く関連しており、厚生労働省の特定難病に指定されています。パーキンソン病は、かつては比較的稀な神経難病と看做されていましたが、近年の高齢化に伴い、その数が急速に増加しつつあります。

パーキンソン病の運動症状としては、安静時振戦、筋強剛、無動/寡動、姿勢反射の障害が4大症状として有名です。前述の如く、安静時振戦はパーキンソン病の発症初期の症状として重要です。筋強剛はパーキンソン病に最も特徴的な症状であり、肘関節や手首関節で「歯車様」或いは「鉛管様」の筋強剛が出現します。姿勢反射の障害は進行期のパーキンソン病に特徴的な症状で、前傾姿勢、小刻み歩行、すくみ足などの症状を呈します。パーキンソン病の診断で最も重要なのは、その症状に対する神経内科診察です。頭部MRI検査も必須の検査ではありますが、パーキンソン病に特異的な頭部MRI所見はないので、あくまでも鑑別のための施行の位置づけです。


一方、パーキンソン病と似て非なる病気にパーキンソン症候群が挙げられます。パーキンソン症候群には、脳血管性パーキンソン症候群や薬剤性パーキンソン症候群、び漫性レヴィ小体病(DLBD)、進行核上性麻痺、黒質線条体変性症などが挙げられます。これらの病気を鑑別して診断するには、専門的知識と経験に裏打ちされた熟練の診察技術が必要とされますので、神経内科専門医の受診が必要です。
パーキンソン病の治療は、抗パーキンソン病薬の内服に加えて、理学療法を併用するのが効果的です。当クリニックでは抗パーキンソン病薬の内服を調整しつつリハビリテーション科での理学療法を同時に進めることが出来ます。前述の如く、日野市では外来でのリハビリテーションを実施している施設は当クリニック以外にはないので、パーキンソン病の症状が疑われる場合には、ぜひ当クリニックの神経内科専門外来の受診をお勧め致します。また、当クリニックでは、介護保険の申請や特定疾患医療費の助成、身体障害者手帳の交付などの社会福祉サービスに関しても、迅速に意見書の記載を行い、積極的に進めていく方針ですので、中・長期的な視野で治療方針立てることが可能です。ぜひご相談下さい。

体を動かしづらい・歩きづらい等の原因として考えられる主な疾患 パーキンソン病
パーキンソン症候群
(脳血管性パーキンソン症候群や薬剤性パーキンソン症候群、び漫性レヴィ小体病(DLBD)、進行核上性麻痺、黒質線条体変性症)